今年1月、盗撮のカリスマと呼ばれた男が逮捕、起訴された事件がありました。犯行にかかわったグループのメンバーも次々と逮捕され、その中には県庁職員や公安調査官といった、社会的地位のある堅い職業の人間も含まれていたといいます。
この事件のようなれっきとした犯罪行為とは違いますが、私が公務員時代に覗き見た、ちょっとばかりヤバい現場の話を、今回は暴露してみようと思います。
草野球の試合後の打ち上げ
会社などに勤めていると、忘年会や新年会、新入社員歓迎会など、季節ごとに飲み会や食事会と称した集いの場が設けられるものですが、かつて私が公務員だった頃にも、やはり同じようなものがありました。
そういった飲み会の費用は、毎月末に職員から徴収し、積み立てたものの中から支出されていました。徴収されるといっても、強制ではなく任意でした。「一口500円から」と決められていて、金額に上限はありませんでした。職員の中には「私は参加しませんから払いません」と言って、絶対に会費を払わない人もいました。私はいちおう500円、余裕があるときは1000円を払っていましたが、それでも毎月というわけではありませんでした。
私が勤務していた某省の地方局には軟式草野球チームがあり、私も所属し、いちおうレギュラーとして試合にも出ていました(かなりの弱小チームで、メンバーも12~13人しかいなかったので、ゴロやフライをキャッチできる人であれば誰でもレギュラーになれました)。
対戦するチームは同じ公務員ばかりではなく、民間企業のチームもありました。公務員チームはたいがい弱小で、強かったのは警察関係くらいだったと思います。トーナメント戦になると、勝ち上がって行くのはたいてい民間企業のチームでした。
草野球の試合のあとには必ず打ち上げがあり、身内だけでの集まりもあれば、対戦したチームと合同で飲み会をおこなうこともありました。また、時と場合によっては、飲み会のあとに幹部職員だけが参加できる二次会が取りおこなわれることもありました。
そんな飲み会のあとの二次会で、私はいちどヤバい現場を覗き見てしまったことがあったのです。我々と同じ公務員チームと合同で開催された宴会の場でのことでした。
二次会は事実上の性接待パーティー
広い座敷の間のある、ちょっとした料亭のような店で、二次会が取り行われることになりました。私は入局2年目の下っ端の職員でしたから、当然その宴会には参加できるわけではなく、会場の下準備をしたり、幹部連中を案内する役をしていました。
そのときの二次会には、霞ヶ関の本省から出向して来ている若手幹部数人も参加することになっていて、通常の打ち上げとは違い、ちょっとばかりピリピリムードだったように記憶しています。
開始から20分ほど、ミーティングと称した役所どうしの歓談の場が設けられ、そのときだけは店のスタッフも、私のような案内役の下っ端職員も絶対に入室を許可されませんでした。いわゆる「密談」の場であったようです。
役所どうし合同で開催される二次会には、たいていコンパニオンの女性たちが派遣されて来ます。「密談」がおこなわれているあいだ、女性たちは控え室で待機していて、宴会が始まるタイミングに合わせて投入されるわけです。
私を含む数人の案内役の若手職員は、控室でコンパニオンたちと一緒に待機していました。彼女たちはみな容姿端麗で、モデルなみにスタイルのいい女性ばかりでした。私が先輩職員から聞いた話では、VIP専用の高級風俗店や愛人バンクに登録している女性、ローカル芸能プロダクションに所属する女優の卵などが派遣されて来るそうです。
コンパニオンを手配するのは役所の総務課なのですが、裏で政治家や高級官僚の口利きもあってこそ実現できるものだったようです。こういったコンパニオンの手配にはけっこうな額の費用がかかっているはずで、積立の会費だけではまかないきれませんから、おそらく役所ごとに割り当てられた予算(税金)の中から支払われていたのだと思います。口利きをした政治家や官僚にも礼金が支払われていたかもしれません。
宴会が始まり、コンパニオンの女性たちが投入されると、それまで眉間にしわを寄せて堅苦しい表情を作っていた幹部連中も、ただのエロおやじの一団と化してしまいます。
飲み物を運ぶ手伝いなんかもさせられていた私は何度も宴の間へ出入りしていましたが、女性たちはみな積極的で、幹部連中の横に座って密着接待をしていました。
酔いが回り宴が佳境に入ると、もうほとんど乱行状態でした。霞ヶ関から出向中の若手幹部のひとりはコンパニオンの女性ふたりを全裸にし、部屋の隅で代わる代わる交わっていました。
定年間近の上席職員などは裸踊りを始め、フル勃起したイチモツを女性に握らせて大喜びしていましたが、しまいには暴発してしまい、放出したものが見事に女性のビールグラスの中に入ると、さらに歓喜し、「ホールインワン!!」と大声を上げていました。まったく見るに堪えない状況で、控室に戻った私は大きな溜息をついてしまいました。
宴会という名の乱行パーティーはまだまだ続きます。広い宴会場のあちらこちらで女性と交わっている幹部連中がいて、女性の甲高い喘ぎ声とエロおやじの歓喜の雄叫びが部屋中に響き渡っていました。
ひとりの女性を数人で寄ってたかって責めている連中もいて、みなすっかり穴ともだちといった感じになっていました。宴会の間はまさに地獄絵図と化していました。
こんな破廉恥きわまりない宴会を催すことができたのは、時代がまだかろうじてイケイケムードだった90年代であったことと、当時はまだ幹部職員の中に女性がひとりもいなかったことが後押ししていたのだと思います。今の時代にそんなことをすれば必ずどこかのメディアがリークし、即アウトとなるでしょう。
初めて生で見た「女体盛り」
そんな乱行状態が落ち着いた頃、いよいよ宴会のメインともいえる「女体盛り」がおこなわれます。幹部の中には女性との交わりよりもこちらのほうを楽しみにしている者もいたと聞きます。
「女体盛り」というと、ほとんどの人はAV作品などの映像や写真でしか見たことがないと思いますし、実際にそんなものがあるのかどうか半信半疑の人もいるかと思います。しかし「女体盛り」は現実におこなわれていて、それほど珍しい演出でもないと聞きます。日本特有の文化というわけでもなく、ヨーロッパなどでもパーティーの演出の一部としておこなわれることがあるようです。
私はそのときの二次会で、初めて実物の「女体盛り」を見ました。幹部のひとりにどうしてもサインをもらわなければならない書面があり(そんな宴会の最中にも役所から〝緊急〟案件の書面が回ってくることがあるのです)、私が宴会場の中まで届けに行くことになったのですが、そこで、初めて生の「女体盛り」を目の当たりにしたのでした。
テーブルの上に寝かされた女性はおそらくコンパニオンのひとりで、全裸ではなくビキニの水着を着用していました。女性の体には透明のビニールシートのようなもの(ラップだったかもしれません)が敷かれ、その上に料理が並べられていました。色とりどりの刺身や巻きずし、肉のたたき、だし巻き卵なんかがあったように記憶しています。
私が入室したとき、まだ誰も「女体盛り」には手を付けておらず、幹部のひとりが何やら挨拶の言葉を述べている最中でした。しんと静まり返っているときにタイミング悪く入って来てしまい、方々から白い目で見られた私。案の定、目当ての幹部のところへ書面を持って行くと、「こんなとこまで持って来んな、あほっ!あとにせえやっ!」と一喝されました。
「緊急案件ですので…」と私が言うと、その幹部は「邪魔くさいのぉ!こんなとこまで持って来やがって!」と言い、上着やズボンのポケットをまさぐり始めたのですが、出てくるものは小銭やレシートばかり。ペンが見つからない様子でした。私があわてて自分のペンを渡すと、幹部はそれをひったくり、サインをすると投げて返してきました。
その場をあとにしようとして立ち上がったとき、「女体盛り」の女性と一瞬目が合いました。ピリピリムードの中、彼女がにこっと笑ったように見えて、私はその笑顔になんだか救われたような気持になりました。
ちなみに、コンパニオンの女性の体の上に料理を並べて「女体盛り」を演出してくれたのは、その店の女性スタッフだったと聞きます。本当に迷惑されたことと察します。アホな公務員連中の愚行をどうかお許しください。
ハニートラップを仕掛けた奴は誰だ?
宴会から1週間が過ぎたある日のこと。仕事終わりに先輩職員から呼ばれ、ある指令を言い渡されました。
「この前の打ち上げに参加してたAという若手幹部いてたやろ?ちょっと、あいつを尾行してきてくれへんか?」
そう告げられた、私ともうひとりの下っ端職員。
「職務外事項やから、くれぐれも内密に、他の職員にはバレないようにやってくれ」
その先輩からはそう言われました。
Aというのは、例の霞ヶ関から出向中の若手幹部のひとりで、本省でも将来を嘱望されている人材だといいます。そのAが、在阪中にどこやらの女性タレントと密会を繰り返しているというのです。
しかも、その女性タレントには美人局のうわさがあり、Aがハニートラップに引っ掛かっている可能性がある。何かあってからでは取り返しがつかないから、まずはそのタレントがどこのどいつか見極めてきてほしい。というのが、先輩から言い渡された指令だったのです。
なんだか刑事やスパイみたいで面白そうだと思い、俄然やる気になった私。翌日から仕事終わりにAの行動監視を開始することになりました。
尾行を開始してから四日目と七日目に、Aと女性タレントの密会現場をキャッチしました。ふたりが居酒屋に入って行くところやホテルから出てくるところ、互いが別れた場面などで女性タレントの顔を確認しました。
その女性タレントは眼鏡をかけていて、パッと見ただけでは私には誰だかわかりませんでした。しかし、同行していたもうひとりの職員が直感的に気づいたようでした。
「ほら、あの『○○○○(番組名)』に出ているT.A(イニシャル)だよ」
彼に言われ、私もようやく気付きました。
その女性タレントは、関西ローカルの深夜番組でMCを務めている人物でした。お笑い芸人ばかりが出演するバラエティー番組で、私も見たことがありました。MCを務める彼女は美人で、たしかレースクイーンなんかもやっていたように思います。
私たちは、Aの密会の事実と、その女性タレントの名前を先輩職員に伝えました。私たちの任務はそこまでで、そのあとの処理は「上のほう」でおこなうと言われました。
それから1か月ほどして、Aは若手幹部の中でひとりだけ任期満了を待たずに本省へ帰って行きました。そして、Aと密会していた女性タレントは出演していた深夜番組を降板。さらに後日聞いた話だと、彼女は所属していたプロダクションを辞め、一人暮らしをしていたマンションも引き払い、実家へ帰ったといううわさです。
Aに対するハニートラップは、おそらく本省内部でAと反目し合う派閥による仕業だろうと、先輩職員は言いました。派閥争いが絶えない世界で生きる官僚たちも大変ではありますが、いつもどこかで、その巻き添えを食らう人間がいることも忘れてはいけないなぁと思わされた、貴重な体験でした。